病理学

病理学とは、疾病の本態を解明する学問。

解明方法は、

  • 剖検 autopsy ・・・ 病理解剖。病理解剖と司法解剖がある。
  • 生検 biopsy ・・・ 病巣を摘出して顕微鏡で検査。
  • 細胞診 cytology ・・・ 生体の分泌液、体液などを顕微鏡で検査。がん細胞の有無をみる。穿刺吸引細胞診など。

そもそも健康とは、、、?

身体的・精神的および社会的に完全な良好な状態であることで、単に疾病や虚弱でないということではない。(WHO)

病気とは、、、?

身体の機能・構造が正常から逸脱している状態。

正常とは、、、?

生物の生活現象が生理的変動範囲内で行われること。

= いつも通りであること

世の中に存在する病気は全て以下に分類できる。

1)退行性変化

2)進行性変化

3)循環障害

4)炎症

5)腫瘍

6)奇形

7)???

1) 退行性変化 Regressive change

細胞が種々の害作用を受け、その機能が減退または消失して生命力が弱っていく変化のこと。

特に、細胞内物質代謝に障害を来たし、細胞自体の死を招くような過程のこと。

a) 変性

細胞の形態学的変化。

細胞や組織が障害され性質が変化すること。

細胞内外への異常代謝物質の沈着が特徴的である。

障害された細胞に現れる色々な変化。

※※※あとで図を挿入※※※

b) 萎縮 atrophy

臓器または組織がその容積の減少を示すこと。

細胞数の減少、細胞個々の容積が減少、、、など

未発達や低形成とは異なる。

  • 変性萎縮 → 変性と萎縮が同時に起きる
  • 廃用(無為)萎縮 → 長時間その場所を使用しないことによって起きる。※宇宙飛行士が宇宙から戻って来た時に筋力が低下して歩けないなど
  • 圧迫萎縮 → コルセットなど。脂肪細胞、筋肉細胞が萎縮する。
  • 老人性(生理的)萎縮 → 老人の背が低くなる。
  • 神経性萎縮 → 小児麻痺など
  • 栄養障害萎縮 → 飢餓
  • 内分泌性萎縮 → ホルモンによるもの。閉経など。※閉経しても生きているのは人間だけ!

c) 壊死 necrosis

壊死とは、、、?

細胞や組織が局所的に死滅した状態

個体死ではない

死んだ細胞に特徴的な変化

  • 融解壊死(液化)

破壊された組織が一時的に融解して液状化。脳軟化症の壊死巣。

  • 凝固壊死

細胞のタンパク質が凝固して固くなる。結核、梅毒の乾酪化。

壊死組織の運命、、、

自己融解:死んだ細胞組織に含まれるリソソームの分解酵素の作用により分解される。

異種融解:周囲組織から組織液や酵素が侵入し分解する。

異質化:生体反応、異物排除処理、石灰化、瘢痕化、空洞形成、二次感染。

壊死と枯死、、、

細胞死には、necrosis(壊死)とapotosis(枯死)の二つがある。

apotosisは細胞の自殺プログラム。発生などの様々な生理的過程で不要な細胞を除去。

形態学的には染色質(染色体の主成分)の濃縮(hypercondensation), 破砕化(fragmentation).

necrosisとの間には様々の共通点がある。

2)進行性変化

細胞が新生増殖して組織の欠損離断を修復し、その働きの不足(機能不全)を補おうとする生体の修理現象および機能代償である。

a) 再生 regeneration

生体の組織の一部が失われたとき、残った同一組織が増殖し、その欠損部位を修復すること。生体の修理現象。

  • 再生力が強い部位、、、

血液細胞、表皮細胞、粘膜細胞、骨組織、末梢神経細胞、結合組織

  • 再生力が弱い組織、、、

腺細胞、軟骨組織、平滑筋細胞、横紋筋細胞、

  • 非常に再生しにくい組織、、、

中枢脳神経細胞、心筋細胞

ア)結合組織の再生(創傷治癒過程)

肉芽組織(傷口に新しく盛り上がってくる組織)

※遊走細胞(白血球、リンパ球、形質細胞、組織球、単球、巨細胞)

※繊維芽細胞

※新生毛細血管

  • 瘢痕 scar

障害部位が不完全に治癒すると繊維化が起きる。

繊維芽組織は少なく太い膠原繊維(コラーゲン)が主成分。

  • ケロイド Keroid

皮膚損傷に対する組織反応で膠原繊維(コラーゲン)の生成過剰。

  • 痂皮 scab

傷表面の滲出物が乾燥し傷のうえに掲載される硬い皮状の固形物。

イ)肥大

臓器または組織がその容積の増加を示すこと。機能代償。

細胞数の増加。細胞個々の容積の増加。

※機能性肥大 ・・・ たこ、まめ、筋肉、スポーツ心

※病的肥大 ・・・ 心肥大、偏側性腎肥大、偏側性精巣肥大、前立腺肥大

c)化成 metaplasia

分化熟成した組織がさらに変化して修復すること。機能代償。

炎症などの刺激に対してより安定した抵抗性がある細胞に組織が変化すること。

例)偏平上皮化成

※※※あとで図を挿入※※※

例)腸上皮化成 ・・・

胃炎の際に、胃腺上皮細胞が腸上皮細胞に化成し粘液を分泌する。

3)循環障害 Disturbances of circulation

A)血液循環障害

a)充血 Hyperemia

動脈血の増血。

b)うっ血 Congestion

静脈血のうっ血、充満。

c)貧血 anemia

  • 血液量の減少
  • 鉄欠乏性貧血 ・・・ 赤血球内のヘモグロビン量低下
  • 溶血性貧血 ・・・ 赤血球の破壊 

※犬猫ではタマネギ中毒

  • 再生不良性貧血 ・・・ 造血組織破壊 

※骨髄の破壊

※老化とともに骨髄の造血能力が低下する。色も変化(赤→黄→白)

  • 悪性貧血 ・・・ 赤血球の成長障害

d)出血 hemorrhage

赤血球が血管外に脱出すること。

  • 吐血 ・・・ 消化菅(上部)からの出血 → 黒褐色の血
  • 喀血 ・・・ 呼吸器からの出血 → 鮮紅色
  • 下血 ・・・ 血便、タール便、消化器(下部)からの出血
  • 血尿 ・・・ 泌尿器(腎臓、尿管、膀胱、尿道)からの出血
  • 血腫 ・・・ 血液が組織内に貯留した状態

※耳介→耳血腫、皮下→皮下血腫(血まめ)、頭蓋骨硬膜下血腫(格闘技の選手に多い)

e)梗塞

終末動脈が血栓または塞栓によって閉鎖され、その支配下組織が壊死を起こした状態。

梗塞が起こりやすい臓器 ・・・ 腎臓、脾臓、心臓

  • 肺動脈塞栓症(エコノミークラス症候群)・・・ 産褥、下半身麻酔、心疾患などで起こりやすい。
  • 播腫性血管内凝固(DIC) ・・・ 全身に微小血栓が多数形成 → 循環障害発生
  • 側副循環 ・・・ 梗塞が発生した箇所が壊死し、近傍に血管が新しく形成されること。

B)リンパ液循環障害

a)水腫 edema

組織・体腔間のリンパ液異常増殖

b)浮腫 edema

皮下組織に余分なリンパ液貯留

c)腔水腫(〜水症)dropsy

体腔内にリンパ液貯留。心嚢水腫、陰嚢水腫、胸腔水腫、腹腔水腫(胸水症、腹水症)

C)ショック shock

臨床的虚脱症状

  • 皮温↓
  • 呼吸↑(促迫、頻呼吸)
  • 脈拍↑
  • 血圧↓
  • 血圧↓
  • 尿量↓
  • チアノーゼ

病理

全身性末梢循環不全

・・・ 酸欠

・・・ 組織細胞の低酸素状態

・・・ 組織細胞の代謝機能低下

①出血性ショック ・・・ 出血によって全身の血液循環量が低下する

②敗血性ショック ・・・ 細菌の毒素によって血液の循環量が低下する

③アナフィラキシーショック

D)脱水症 dyhydration

体液の欠乏

臨床症状

  • 循環不全
  • 腎不全
  • 低血流ショック
  • 眼球陥没
  • 皮膚弾力↓
  • 脳脊髄液↓
  • 高張性脱水(水分欠乏)

口渇、欠尿、舌乾燥、衰弱感、血清Na↑、精神障害

  • 低張性脱水(電解質(塩分)欠乏)

嘔吐、痙攣、低血圧、水と電解質が共に欠乏

  • 混合型脱水(水分、塩分欠乏)

アシドーシス(酸性、pH低下)、アルカローシス(アルカリ性、pH上昇)

4)炎症 Imnflamation

a)概念

刺激に対する生体反応の一つの型。経過を追って変化する現象。

原因(刺激)・・・

  • 物理的原因(刺激)

外傷、温熱、放射線、電流

  • 化学的原因(刺激)

外毒素、内毒素

  • 生物学的原因(刺激)

微生物、寄生虫

b)5大兆候

  • 発赤
  • 腫脹
  • 疼痛
  • 熱発
  • 機能障害

c)分類

  • 原因別命名

ウィルス性、外傷性、寄生虫性、アレルギー性、心因性

  • 経過別命名

急性、亜急性、慢性、劇症

  • 部位・範囲別命名

表在性 ⇔ 深在性

全身性 ⇔ 局所性

限局性 ⇔ び慢性(ランダム)

  • 性状別命名

①滲出性炎

循環障害と滲出が主変化

ア)漿液性炎 ・・・ 血清成分が滲み出る(例:やけど)

イ)繊維素性炎 ・・・ 臓器と臓器が癒着する(例:繊維素性肺炎)

ウ)化膿性炎 ・・・ うみが体内に貯留

(例:蓄膿症、膿瘍(アブセス)、蜂窩織炎(フレグモーネ))

エ)出血性炎 ・・・ 例:パルボウイルスの出血性腸炎

オ)壊死性炎 ・・・ 炎症部位の大部分が壊死に陥る状態

(例:中毒性肝障害、劇症肝炎)

カ)壊疽性炎 ・・・ 壊死部に二次的に腐敗菌が増殖して起こす炎症

キ)カタール性炎 ・・・ 粘膜のみにみられる症状で、組織の破壊を起こさないもの

②増殖性炎

滲出性病変に引き続き、病変部に腫瘤を作る炎症。

炎症性細胞浸潤 + 繊維増殖

(例:ハムスターの増殖性回腸炎、フェレットの増殖性大腸炎)

③肉芽腫性炎(特異性炎)

増殖性炎の一種であり、繊維芽細胞、毛細血管を主体とし、病変部に腫瘤(肉芽腫)をつくる。古くなると、瘢痕となる。

異物性肉芽 ← 体内の異物(ガーゼ、糸、鉛筆の芯)

③’特異性炎

肉芽腫性炎の一種であるが、ある特定の細菌やウィルスの感染によってのみ起こり、肉芽腫を形成するので区別している。

結核菌(結核症)、放線菌(放線菌症)、アスペルギルス、クリプトコッカス、梅毒スピロヘータ、らい菌、、、

※※※あとで図※※※

④アレルギー性炎

抗原、抗体反応により生じる。

生活活性物質(ヒスタミン、セロトニン、アセチルコリン、、、)に起因する。

Ⅰ型〜Ⅳ型まであり、Ⅰ型〜Ⅲ型は自己免疫性疾患。

5)腫瘍 Tumor

a)概念

腫瘍とは体細胞の自律性増殖による病的組織発育状態のこと。

自然には治癒しない。 ← この点が他の疾病とは異なる

b)二大特性

  • 発育が自律性

他からの制御を受けない。

無制限の増殖。

  • 形態が異型的

構造形態が正常組織と異なり不規則

c)肉眼的観察ポイント

  1. 発育部位
  2. 数/大きさ
  3. 境界(明瞭/不明瞭) → つまめる?/つまめない?
  4. 形状(結節状、きのこ状、ポリープ状、、、)
  5. 硬度
  6. 色調(内部が灰白色であることが多い)
  7. におい(基本しない。かなり悪化すると臭う)
  8. 痛み(最初は痛くない。悪化すると痛い)

d)発生

生体内既存組織細胞の全てで発生しうる。

原因はさまざま、、、

  • 刺激説
  • 病原体説(ネコ白血病ウィルスなど)
  • 迷芽説
  • 内分泌説(ホルモン)
  • 素因説(遺伝)
  • 突然変異説(DNAの突然変異)
  • 分化異常説
  • 癌遺伝子説(癌抑制遺伝子とのバランス)

e)発育

  • 膨張性発育 ・・・ つまめる(境界明瞭) → 良性が多い
  • 浸潤性発育 ・・・ つまめない(境界不明瞭) → 悪性が多い

f)転移

転移とは悪性腫瘍が原発部とは離れた場所(非連続性伝播)に新たに腫瘍病巣を(転移部)をつくること。

例)骨肉腫 ・・・ 肺に転移→肺の中に骨ができる

  乳がん ・・・ 乳腺の癌が肺や肝臓に転移→肺や肝臓に乳癌

  セミノーマ ・・・ 脳の中に精巣ができる

  • リンパ行性転移

腫瘍細胞がリンパ管の中に入り、リンパ液の流れに乗って遠くのリンパ節や臓器に転移すること。