犬猫の血液検査のはなし<第2話>

〜血液生化学検査と肝臓のはなし〜

第1話で動物病院での血液検査の種類について軽く触れました.第2話では血液検査の中でも血液生化学検査について掘り下げようと思います.

血液生化学検査
血中有機物 酵素 電解質

GLU,TP,ALB,

CRE,BUN,T-Bil,

T-cho,TG...

ALT(GPT),AST(GOT),

ALP,アミラーゼ...

Na,K,Cl,

P,Ca...

そもそも,動物病院で血液検査をする場合は手術前をのぞいて主に2つの目的に分けられます.

・健康診断

・鑑別(下痢をしている食欲がないなどの主訴があって検査をする場合)

病院の方針にもよるとは思いますが,多くの場合健康診断では犬や猫に多い疾患で上昇や下降が見られる項目を広く検査し,鑑別の場合には主訴や動物を診察してから疑わしい疾患での検査項目をピックアップして血液検査を行うことが多いと考えられます.

項目を1つ1つあげて,説明文を書くのは別の機会にして今回は犬猫に多い疾患で用いられる検査項目に絞って記事を書いていきたいと思います.

まず,犬猫に多い疾患として肝臓に関するものがあげられるので,肝臓の話から始めます.

肝臓は体内の化学工場と言われるように,体内にある化学物質を合成したり分解したりしています.例えば,薬を代謝したり,アルコールを分解したり,胆汁を生成したりしています.

肝臓の機能

・物質の代謝

・血液成分の調整

・胆汁の生成

・尿素の合成

・解毒

・その他(体温調節など)

肝臓疾患に関連する検査項目は以下

<酵素>

①ALT(GPT):肝細胞の細胞質内にある酵素.肝疾患で上昇.

②AST(GOT):骨格筋,肝細胞内のミトコンドリア内に存在する酵素.筋肉疾患,肝疾患で上昇.

ALP:骨,胆管上皮などに存在する酵素.胆道系疾患,骨代謝疾患,内分泌疾患などで上昇.

(※猫では肝リピドーシス甲状腺機能亢進症などでALP値が上昇する.犬では様々な原因でALPが上昇してしまう)

γ-GTP(GGT) :胆管系疾患で上昇する酵素.特に胆汁うっ帯で高値.猫では胆道系に高い感度がある.

<血中有機物>

T-BIL(総ビリルビン):ビリルビンとは肝臓で作られる糞便の茶色成分.血液から産生される.関節型(水溶性でない),直接型(水溶性)のビリルビンがあり,総ビリルビンはそれらの総合値.ビリルビンの上昇は黄疸を意味する.黄疸は肝臓疾患と強い関連がある.

※黄疸の分類

溶血性黄疸:再生性貧血がみられる.

肝性黄疸:肝臓障害.ALT,ASTの上昇.

肝後性黄疸:胆管閉塞,胆汁うっ滞,胆管炎.ALP,Tcho,ALT,ASTの上昇.

⑥BUN(尿素窒素):血液中の尿素に含まれる窒素の量.腎機能低下→BUN上昇,肝機能低下→BUN低下.

⑦T-cho(総コレステロール):HDLコレステロールとLDLコレステロールの合計が総コレステロール).肝臓で合成,代謝され,胆汁で排泄される.

胆道閉塞(閉塞性黄疸)→T-cho上昇.

肝細胞障害,甲状腺機能亢進症→T-cho低下.

(※HDL:余分なコレステロールを肝臓へ運ぶ.LDL:肝臓から全身にはこばれるコレステロール.動脈硬化を促進.)

⑧TG(中性脂肪):食餌中の主な脂質成分.

重度の肝障害→TG上昇.

肝硬変→TG低下.

⑨GLU(血糖):血液中のブドウ糖.食餌による摂取や肝臓で産生・放出される.脳,筋肉,赤血球などの末梢組織で消費される.(※特に中枢神経ではグルコースが唯一のエネルギー源)

⑩TP(総タンパク):ALB,GLB,Fibんなど血漿中のタンパクの合計.

肝不全→低タンパク血症(ALB低下)

⑪ALB:浸透圧の維持,物質の輸送を行う.ALB低値は産生の低下や喪失,希釈,隔離などによって引き起こされる.

飢餓・絶食・低栄養や肝不全,膵外分泌不全→産生の低下

蛋白漏出性腸炎(PLE)や蛋白漏出性腎炎や重度の皮膚欠損→喪失される.

⑫GLOB:5分画に分けられる(蛋白電気泳動によって測定).

⑬TBA(総胆汁酸):肝臓で合成され胆嚢に貯蔵される.食後胆嚢から腸管へ放出される.回腸で回収され,95%は門脈循環(腸肝循環)で肝臓へ戻る.5%糞便中に排泄される.門脈シャントの診断に用いられる.

⑭NH3(アンモニア):タンパク質の代謝の途中でアミノ酸から産生される.門脈循環から肝臓の尿素サイクルで尿素に合成され,腎臓から排泄される.肝障害があると代謝されなくなるため上昇.

門脈シャントで上昇濃度が上がると肝性脳症になる.

 

様々な肝疾患

●肝炎(急性・慢性):肝細胞の壊死,変性,炎症細胞の浸潤.細菌やウイルス,薬物が原因.進行すると,広範囲の繊維化が起こり,肝硬変になる.

●胆石症・胆泥症:胆汁うっ滞が原因で起きる.閉塞が起きると,黄疸,元気消失,嘔吐などの症状が起きる.

胆嚢粘液嚢腫:胆嚢内に過剰な粘液が貯留し,悪化すると総胆管の閉塞や胆嚢の破裂が生じる病気.何らかの異常で胆嚢内に胆汁成分が変質して進行していくと胆汁うっ滞が生じる.

肝リピドーシス(脂肪肝):脂質代謝が障害され肝臓に過剰な脂肪が蓄積する病気.肝臓の腫大・黄褐色化がみられる.肥満猫に多い.犬は糖尿病から脂肪肝になりやすい.脂肪肝はFNAでも確定可能.膵炎→脂肪肝も多く,予後不良.

(※肥満猫ではTG,ALP,GGTの上昇が顕著)

胆管肝炎(症候群):胆管とその周辺の肝細胞の炎症性疾患.

・胆管炎:胆管に炎症が限局されている段階(無症状).

・胆管肝炎:周辺の肝細胞に炎症が広がった段階(症状あり).
化膿性胆管肝炎→好中球主体.

非化膿性胆管肝炎→リンパ球・形質細胞主体.
・胆汁性肝硬変:胆汁の排泄機能低下から胆汁がうっ滞し肝細胞が繊維化.

※猫の三臓器炎(併発することが多い!)

①膵炎

②胆管肝炎

③IDB(特発性炎症性腸炎)

→ 犬猫の血液検査のはなし<第3話>〜血液生化学検査と腎臓の話〜

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です